IGETA MASAOMI

道化師の朝の歌, 1996
fig.04:道化師の朝の歌, 1996
札幌芸術の森美術館
東の地平、永遠(とわ)の雪, 2001
fig.05:東の地平、永遠(とわ)の雪, 2001
北海道立近代美術館

レリーフ絵画からステイニングへ。

以前の私の作品は、レリーフの支持体を持つ絵画でした。絵画における支持体はもっと自由であるべきで、そこに新たな絵画の可能性と独自の表現を見出せると考えていました。何を描くかではなく、絵画そのものを構造的に構築し、表現する行為。自分の最も美しいと思える色と形を表現出来得る最適な方法論だと思っていたのです。ところがこの制作を続けているうちに、私はやがて大きなストレスと問題を抱えることになりました。まず、支持体そのものを構築する行為は、当初私の思い描いていた美しいと感じる形から導き出されていました。 しかし、 何層にも重なるボードを何度もカットし貼っていく作業はまるで工業製品を作っているようで、次第に私は支持体を作る作業そのものが大きな負担となっていったのです。さらに完成した形(支持体)の上に色彩で描いていくという行為は、まさに描くというより出来上がった支持体に色をただ塗って完成させていくだけの作業に感じられるようになってしまったのです。こうして生み出されたこれらのレリーフ絵画は、そもそも自分にとって絵なのだろうか、絵を描くという行為そのものを純粋に心から楽しめているのだろうか、という疑問と常に向き合わなくてはならなくなったのです。

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