IGETA MASAOMI

君と僕とあの光のこと, 2003
fig.06:君と僕とあの光のこと, 2003

2001年冬、美術館でのレリーフ絵画の展示を最後に、私はこの制作方法と決別し、自分自身が心から純粋に、描く喜びを感じられる作品を制作しようと思いたったのです。

レリーフという形そのものに従属していた、私にとって最も大切なはずの「色彩」をまず開放すること。そして、私の目や手の動き=身体性とその行為によって生み出されるダイナミズムをできる限りダイレクトに画面に伝え得る方法を見つけること。それにはまず単純に紙やカンバスに線を引き、色を置いていくことが何より大切だと考えました。紙に何度も繰り返されていく、イメージを形に描き起こすことだけが目的のドローイング。それまで厚塗りを繰り返していた色彩も、自分の感覚を重視することで徐々に研ぎ澄まされ、やがてより透明感を感じさせるものへと変化してきました。そして出会ったのが現在用いている「ステイニング(染み込み)」という方法でした。ステイニングという技法そのものは決して新しいものではありません。けれど私にとっては、レリーフから脱却し、純粋に平面の絵画を描くために、また色彩と形を自己の身体性とより密接につなげられる方法として、ステイニングはまさにぴったりだったのです。ここで私にとって大切なことはステイニングという技法がレリーフを作るという以前の制作方法に、単に方法論として取って代わられたのではなく、絵を描くことを見直していく過程の中で行なわれた試行錯誤の中で見つかったのが、たまたまステイニングだったということなのです。

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