IGETA MASAOMI

チャクラ
Chakra
/ 65.2 x 53 cm
65
《チャクラ》
アクリル、キャンバス
65.2 x 53 cm 
Chakra
aclyric on canvas
≪ タイトルについて ≫
インドの神秘性にも、ヒーリングにもさして興味はないのですが、ステイニングを試し始めたころの僕には、色彩に手や目が純粋に反応していける喜びでまるで自分の身体の中からきらきらとした何かがこぼれだすような気持ちがしたものです。自分の中の美意識の亀裂に自分自身が滑り落ちそうになっていた時に、微かに見えた光。それは僕にとってきっとチャクラのようなものだったに違いありません。
mind fruit
mind fruit
/ 194 x 194 cm
194
《mind fruit》
アクリル、キャンバス
194 x 194 cm 
mind fruit
aclyric on canvas
≪ タイトルについて ≫
果物搾り器でぎゅっとしぼった時に立ち上るあの匂いは、忘れていた様々な記憶を呼び起こしてくれます。けれど記憶を手繰る時、匂いでぎゅっと切なくなる気持ちは思い出せても肝心の果物が何だったのかがいつもはっきりしません。だから心の果物を形にしてみました。ほんのりとした香りではなく、むせ返るような甘い匂いがしそうな心の果物の形。
君と僕とあの光のこと
You and Me and the light
/ 194 x 194 cm
194
《君と僕とあの光のこと》
アクリル、キャンバス
194 x 194 cm 
You and Me and the light
aclyric on canvas
≪ タイトルについて ≫
大切な君が、ずっと君自身の大切なものを変わらず信じ続けていけますように。できるならずっとそんな君と君の見ているあの光を僕も見ていたい。こんなあまりにもストレートで気恥かしい意味を持ったタイトルが、この絵を描き始めてすぐに思い浮かんでしまい、とうとう描きあがるまでそれは変わりませんでした。
「ただ美しい。」
僕はこの時、そう思える絵を描きたかったのです。花のイメージを思い浮かべられる方が多いのですが、そうではありません。僕の大切な人たちを思い、その人たちに観てもらうたびに綺麗だと言ってもらいたくてこんな光の形になりました。そして未だに手を入れ続けている作品でもあります。色々な思いが詰まっているはずのこのタイトル、英語表記は意外と淡々としたものでがっかり。日本語って繊細でいいなって思いました。
8月の冷ややかな月の下
in the cool August moon
/ 72.5 x 72.5cm
100
《8月の冷ややかな月の下》
アクリル、キャンバス
72.5 x 72.5cm 
in the cool August moon
acrylic on canvas
≪ タイトルについて ≫
北の大地は、八月も下旬になると真夜中には結構ひんやりとする時があったりします。そんな夜に浮かぶ月は、とても澄んだ光をしていていつまでもいつまでも見ていたくなります。
僕は太陽の下で見る色彩を無条件で信じてしまうのですが、タイトルには以前から時々月が登場します。きっと月の光が照らし出す色や形のつかみどころのなさをいつか描き出したいと思っているのかもしれません。全くの無自覚なのですが。
僕はこの美しい庭で迷子になってしまった
I am lost in a beautiful garden
/ 72.5 x 72.5 cm
100
《僕はこの美しい庭で迷子になってしまった》
アクリル、キャンバス
72.5 x 72.5 cm 
I am lost in a beautiful garden
acrylic on canvas
≪ タイトルについて ≫
夏の光が降り注ぐ庭先で描いている途中、この絵は一体どうなってしまうのだろうというとてつもない不安にかられました。絵の中で色彩と一緒に僕はすっかり迷子になってしまったのです。
水のバレエ
water ballet
/ 100 x 100 cm
120
《水のバレエ》
アクリル、キャンバス
100 x 100 cm 
札幌芸術の森美術館蔵
water ballet
acrylic on canvas
SAPPORO ART PARK Museum Collection
≪ タイトルについて ≫
小さい頃、水が踊るとゼリーのようになって、最後にはくらげになると信じていました。水がバレエをするように、たおやかでしなやかなドローイングができるように意識し始めたのが、この絵を描いていた頃です。線で、水の形をゆっくり少しずつ閉じ込めて、とどめておく作業がわかってきたのでした。

ちなみに water ballet はシンクロナイズドスイミングの意味もあるそうです。イメージとは若干ずれてしまいますが、響きも良いしわかりやすくていいかもしれないと思いそのままにしました。
ある光
a light
/ 100 x 100 cm
120
《ある光》
アクリル、キャンバス
100 x 100 cm 
個人蔵
a light
acrylic on canvas
Private Collection
≪ タイトルについて ≫
話すと意外に思われることが多いのですが、ステイニングで絵を描き始めてから屋外で制作することが増えました。
暑い夏の夕暮れ、描いていたキャンバスに一匹のウスバカゲロウがとまりました。はかなくやわらかいけれど凛としたカゲロウの半透明な羽。あの日見たカゲロウの放った微かなゆらめきの向こう側に見えた光をイメージしたタイトルです。
ガーネット
garnet
/ 100 x 100 cm
120
《ガーネット》
アクリル、キャンバス
100 x 100 cm 
札幌芸術の森美術館蔵
garnet
acrylic on canvas
SAPPORO ART PARK Museum Collection
≪ タイトルについて ≫
ピンクは美しい色だけれど、薬は使いようで毒になり、愛も過ぎれば花を枯らす。ひびきあう歌は美しいけれど、逃げ出したくなる今日は僕にただ重くずっしりとのしかかる。透明なピンク色の底に沈んで見える妖しいゆらめきを捕まえれば、何かがふんわりする気がしたのです。
私達は液体と光と緑色
We're liquid and light and green
/ 145.5 x 97 cm, 145.5 x 97 cm
380
《私達は液体と光と緑色》
アクリル、キャンバス
145.5 x 97 cm, 145.5 x 97 cm 
個人蔵
We're liquid and light and green
acrylic on canvas
Private Collection
≪ タイトルについて ≫
見ていると家に帰りたくなる冬の海や、雨がまっすぐ静かに降る湖は、水の色が緑色。
木漏れ日に透けて見える樹々の葉っぱも緑色。緑色には多くのイメージとバリエーションが存在しますが、この絵の緑色は、水のようにさらさらしていない、とろりとした液体のような感じ。深い深い透明な緑色の液体は、僕たちをゆるゆると包み込み、それは冷たくも温かくもなく、ゆるやかに溶け合っていくようです。緑色は僕の大好きな色で、けれどずっと絵にできない色でもありました。出来上がった時、決して満足ではないけれど心の奥のほうで何かがゆっくり融けて流れ出たようでした。
太陽の涙
the tears of the sun
/ 194 x 194 cm
194
《太陽の涙》
アクリル、キャンバス
194 x 194 cm 
the tears of the sun
aclyric on canvas
《タイトルについて 》
切ないけれど悲しく落ち込んでばかりいるわけではなくて、今たとえ闇の中にいても向こうのほうに微かに光が見えてまた頑張ろうと思うことがしばしばあります。切ない思いを抱いて描く絵、その弱く儚いものにこそある感動を信じ、現実のその先に向かう自分の思いの深さを信じて描くこと。こぼれ落ちる涙の形は、思いのほか熱く力強いものでした。
Swing slow music
Swing slow music
/ 53 x 65.2 cm
90
《Swing slow music》
アクリル、キャンバス
53 x 65.2 cm 
Swing slow music
acrylic on canvas
《タイトルについて 》
ジャズのようにゆっくりと、でもリズムにのって軽やかにスィングする色。ずっと見ていると紫色がぷるんと画面からこぼれ落ちて来るように描こうと思いました。最近自分の中で長い間封印していた黒を使った絵を描きたいと思い始めています。この絵はきっとその移行期にあり、黒をいつか手に入れるための紫色なのかもしれません。
甘い水色
sweet blue
/ 35 x 35 cm
50
《甘い水色》
アクリル、キャンバス
35 x 35 cm 
sweet blue
acrylic on canvas
《タイトルについて 》
ブルーは僕の中で、どうしても形が曖昧になる傾向があります。だからこの絵は形よりも、この色から僕がいつも感じる、ほのかな甘さを描きたいと思い九月の空と連作で描いた作品です。甘いけれど、どこか厳しさのある青になったと思っています。恋は水色というタイトルと迷ったのですが、ある知人の猛烈な反対にあってしまいやめてしまいました。
きいろのかおり
yellow fragrance
/ 35 x 35 cm
50
《きいろのかおり》
アクリル、キャンバス
35 x 35 cm 
yellow fragrance
acrylic on canvas
《タイトルについて 》
東京へは金木犀のかおりのする季節に訪れることが多く、その匂いが僕にとってはなぜかこの絵のような黄色のイメージなのです。ある年の晩秋の東京、夕暮れから夜にパン屋さんから自転車に乗って走った時の風の匂いは、札幌の街のそれとは全然違うものなのに、何故かひどく懐かしい香りがして僕は思い出の波の中で一瞬息が詰まりそうになりました。
キャラメル
caramel
/ 35 x 35 cm
50
《キャラメル》
アクリル、キャンバス
35 x 35 cm 
caramel
acrylic on canvas
《タイトルについて 》
ベリーベリーストロベリーというアイスクリームの名前と迷った末に、このタイトルをつけました。ちなみに僕にとってのキャラメルの味は、子供の頃の記憶を一瞬のうちによみがえらせるタイムマシーンのスィッチのようなものです。
9月の空
sky of september
/ 35 x 35 cm
50
《9月の空》
アクリル、キャンバス
35 x 35 cm 
sky of september
acrylic on canvas
《タイトルについて 》
九月の空が一番好きです。夏の背中と秋の匂いが一緒に感じられて、遠いあの日に見上げた気持ちを思い出させてくれるからです。雲のすき間から、空のブルーが僕に流れて来てくれないかといつも思って眺めていました。
ペーターのピンク
Ppeter's pink
/ 194 x 97 cm
100
《ペーターのピンク》
アクリル、キャンバス
194 x 97 cm 
Ppeter's pink
aclyric on canvas
《タイトルについて 》
ずっと忘れたままだった、大好きだったイラストレーターのペーターさんは、美しいピンクを軽やかに彩色したやさしく眩しい笑顔を描く人でした。でも僕にとってのピンク色は、彼の描く幸福なイメージとはかけ離れた、いつも心の奥のヒリヒリした所に触れてくるような弱い毒のような色。だからこの絵のピンクは、微笑みをたくさん描いていたペーターさんを久しぶりに思い出させてくれるやさしい色になったように思えて、なんだかとても嬉しかったのです。
あるいはありきたりな花とロマンス
Or an ordinary flower and a romance
/ 100 x 100 cm
100
《あるいはありきたりな花とロマンス》
アクリル、キャンバス
100 x 100 cm 
札幌芸術の森美術館蔵
Or an ordinary flower and a romance
aclyric on canvas
SAPPORO ART PARK Museum Collection
《タイトルについて 》
花をイメージして描こうとすると、次々と浮かぶありきたりなイメージにどんどん縛られていくようで、僕は知らず知らずのうちに目の前の花の奥へと迷い込んでしまいました。テレビから垂れ流されるラブバラードが、辟易するような甘ったるいロマンスを陳腐な歌詞でリピートするように、僕はとてつもなくありきたりな花のイメージと何度も何度も向き合わなくてはなりませんでした。 
花であって、花ではない何かを描くために。
春風の記憶と暮らしている
Living with the memory of a spring breeze
/ 100 x 100 cm
100
《春風の記憶と暮らしている》
アクリル、キャンバス
100 x 100 cm 
Living with the memory of a spring breeze
aclyric on canvas
《タイトルについて 》
風が強く吹くとき。
それはいつも春の思い出ばかりで、その記憶の向こう側には、ゆれる草花と一緒に誰かの背中も春の風にゆられては消えていったりしています。
僕はどうしてもたった一つだけ、春のタイトルのついた絵を、強く吹いては消える風の記憶と一緒に、真冬の美術館に飾ってみたかったのでした。
めくれたオレンジの夢
Dream of a peeled orange
/ 194 x 194 cm
194
《めくれたオレンジの夢》
アクリル、キャンバス
194 x 194 cm 
Dream of a peeled orange
aclyric on canvas
《タイトルについて 》
めくれてみえたオレンジ色の隙間には、細くうねった光の糸がゆらゆらと何本も見えて、まるで糸を引くように僕の目の前にまとわりつく。僕の見たオレンジ色の夢は、嬉しくも悲しくもなくて、めくれた隙間をただじっとのぞき込んでは、光の糸のゆらめきからただ目が離せないでいるという、なんともつかみどころのないものだった。
アタタカイ雨
Warm rain
/ 72.5 x 72.5cm
100
《アタタカイ雨》
アクリル、キャンバス
72.5 x 72.5cm 
Warm rain
acrylic on canvas
《タイトルについて》
彼女を無理に連れ出した明け方近くの雨の夜。かすかにぼやけて見えた街の灯りは、僕たちを包み込んでいるアタタカイ雨のもっとずっと遠くから、いまにも足早に追いかけてくるようで、それは僕の不安とシンクロするように雨に溶けてはまた小さく瞬くのだった。
王子とAQUA
prince & AQUA
/ 194 x 194 cm
194
《王子とAQUA》
アクリル、キャンバス
194 x 194 cm 
prince & AQUA
aclyric on canvas
そして。

王子がその試練に立ち向かうとき
母はチューリップを植えた。
やがて訪れる春の日に
王子の笑顔だけを願って。

王子は懸命に挑み、戦ったが
ほんのわずかに力が足りなかった。

王子は泣いた。

その鉛色の涙は雨になって
美しく花を咲かせたチューリップに
とめどなく注がれた。

母の願いはこれからも、春の日に永遠に咲き続けるだろう。

王子の戦いは、そうしてこれからもずっと続く。

彼の誇りと勇気のために。

ずっとずっと続くのだ。

(「王子とAqua」より抜粋)
植物学者の見た夢
Dream of a Botanist
/ 72.7 x 60.6cm
100
《植物学者の見た夢》
アクリル、キャンバス
72.7 x 60.6cm 2011
Dream of a Botanist
acrylic on canvas
《タイトルについて》
うっそうと生い茂る草花が、空も覆うようなトンネルとなっている。
そのトンネルのずっとずっと奥へと続く道。
歩く男は花を摘み、小さな葉を手にとっては熱心に見入っている。
植物学者である彼の見る夢は、きっとむせかえる草花の匂いとその残像が、無数の光に滲んでいるに違いない。
春の音のレシピ
The recipe of spring tone
/ 60.6 x 72.7cm
85
《春の音のレシピ》
アクリル、キャンバス
60.6 x 72.7cm 2011
The recipe of spring tone
acrylic on canvas
《タイトルについて》
厳しい冬が終わる頃、春の訪れを告げるさまざまな光と音。そんなレシピを僕なりに作ってみました。春のレシピは、これからも新たな色や形となって僕の前に姿を現してくれるような予感がします。
金星の輝く夜
The night of Venus is shining
/ 60.6 x 72.7cm
85
《金星の輝く夜》
アクリル、キャンバス
60.6 x 72.7cm 2011
The night of Venus is shining
acrylic on canvas
《タイトルについて》
そこは金色だけど何故か眩しくはない夜の森。
金星からの光にくるまれて、僕は一人きりでずっと立ちすくんでいる。森の奥から僕を呼ぶ声に、応えてしまうことを躊躇っていたのだ。
月夜の匂い
The scent of moonlight night
/ 60.6 x 72.7cm
85
《月夜の匂い》
アクリル、キャンバス
60.6 x 72.7cm 2011
The scent of moonlight night
acrylic on canvas
《タイトルについて》
夏の夜。
月に照らし出された僕の家の庭には小さな池があって、水面が時折微かに波立つたび、光がユラユラゆらめいていました。
魚や蛙や夜に蠢く小さな生きものや虫たちの息づかい。
小さな命が見つめる水の底から見えた月の光は、どんな色をしていたのでしょう。
月夜の匂いは、真夏の夜の庭の匂いです。
フィガロの結婚
The scent of moonlight night
/ 72.7 x 72.7cm
100
《フィガロの結婚》
アクリル、キャンバス
72.7 x 72.7cm 2011
The scent of moonlight night
acrylic on canvas
《タイトルについて》
誰かのために絵を描くことはきっとない、そう漠然と思っていたのですが、僕にステイニングで描くきっかけをくれた大切なたいせつな二人が結ばれました。
だから、花束をプレゼントしたいと思い、タイトルに結婚という言葉をあえて使ってみました。
心から二人のことを祝福したかったからです。
水のブーケ
The scent of moonlight night
/ 72.7 x 72.7cm
100
《水のブーケ》
アクリル、キャンバス
72.7 x 72.7cm 2011
The scent of moonlight night
acrylic on canvas
《タイトルについて》
清楚な花嫁には、きっとブルーがよく似合うと考えました。
冷たいけれど美しい春の雪どけ水を、心の中で花束に。
フィガロとペアで描いたのですが、このタイトルの方がずっと早くに思いついていました。
Page Top